2003年7〜9月長岡の実験結果報告
(夏休み中または後の)相手と妥協点を見出してもらった実験です。

 2003年7〜9月に実施した実験に参加してくれた皆さん,ご協力本当にありがとうございました.おかげでさまで,「間」の同調傾向が対話についての評価に及ぼす影響を示唆する面白いデータを取ることができました.この研究結果は,去る03年12月に提出した博士学位論文『対人コミュニケーションにおける非言語行動の2者間相互影響』における重要な実験として載せ、また、来る04年9月の日本心理学会@関大にて発表します.
 大会発表原稿等はまもなく公開いたします。ここでは簡単に結果を紹介します。



1. 目的(以下が本実験で調べたいことでした)

 二人で話しているときに、話し方(「間」のとり方や声の高さ)が互いに似てくることがあります。二人で妥協点を見つけるというような対話で観察しやすいことがわかっています(詳細はこちら)。

「間」のとり方を自分に合わせてくれる相手と、合わせてくれない相手とでは、印象が異なるのではないだろうか?

「間」のとり方を自分に合わせてくれる相手と話すほうが、対話についても「よい話し合いだったなぁ」と感じられるのではないか?

「話して楽しかったなぁ」って思えるときって、相手の話し方と自分の話し方が似ているときに多いように思いませんか?


2. 方法

実験参加者 大阪大学学部生24名(男12名、女12名)みなさん本当にありがとう!

条件 次の2条件を設けた。
「間」の取り方を操作するために、この実験では音声遅延を用いました。
音声遅延によってあなたの「間」は延長して相手に聞こえるので、相手は「間」をあわせることができません。
遅延ソフトを使って、あなた(もしくは相手)の声を遅延させていました。
実験参加者の方は遅延に気づいたり気にすることなく対話を進められたはずです。

●遅延減少条件:15分間の対話の間で、遅延時間が段階的に減少する(1000msecから46msecに減少)。

●遅延増加条件:15分間の対話の間で、遅延時間が段階的に増加する(46msecから1000msecに増加)。

(この2つのうちどちらか1つの条件に参加してもらいました)

話題 「女性専用車両をすべての電車に導入すべきかどうか」「原子力発電所の是非」など各ペアに1つずつ。

手続き 実験参加者は意見が異なる対話相手と、非対面状況下でマイクとヘッドフォンを用いて、15分間二人の妥協点を見出すために対話を行った。



3. 結果および考察(詳しくは,まもなくweb上で公開します)

対話についての評価 「妥協点を見出すことができたかどうか」「協調的に話し合えたかどうか」など

遅延減少条件のほうが遅延増加条件よりも、妥協点を見出すことができ、協調的に話し合えたと感じる話者が多い傾向.

さらに、遅延減少条件では同一ペアの2者の評価得点が似ているが、遅延増加条件では同一ペアの2者の評価得点がばらばら。
(↑話し合いがうまくいっているなら、同じペアなら2人とも同じように評価するはずです。)


相手の印象についての評価 「話しやすい」「感じの良い」など

遅延減少条件では対話の前半から後半にかけて、相手の「感じのよさ」が急激にアップする。
遅延増加条件では、「感じのよさ」のアップの程度は少しだけ。


 本研究から言えること:
「間」の取り方が似ているときには、「対話がうまく進んだ」と感じられるようです。また、最初は「間」のとり方が相手と合っていなくても、だんだん似てくれば、相手から「感じがよい」と感じられるのではないでしょうか?その逆だと印象が悪くなりそうですね。


報告:長岡千賀 日本学術振興会・京都大学大学院教育学研究科(04年4月から)

更に興味のある方はこちらまで nagaoka@www.educ.kyoto-u.ac.jp


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