音楽における「間」の長さの判断と呼吸の関連

長岡 千賀  小森 政嗣  中村 敏枝
大阪大学大学院人間科学研究科


The Relation between Breathing and Judgement of ‘Ma’in Music

Chika Nagaoka, Masashi Komori and Toshie Nakamura
{nagaoka, komori, nakamura}@hus.osaka-u.ac.jp
Graduate School of Human Sciences, Osaka University


abstract

The relationship between 'Ma' and breathing was studied by measuring respiration of subjects listening to music. In experiment, 8subjects were asked to adjust duration of 5 inter-phrase intervals in a musical excerpt to feel them "suitable". The excerpt was from Schubert's song 'Prometheus D.674', and the method of serial judgement was used to adjust duration of inter-phrase intervals. During the experiment, subjects' respiration was measured. In 'Ma' whose duration was adjusted longer by subjects, inhalation/exhalation coincided with end of preceding phrase and with beginning of following phrase. The result suggests that subjects' judgement about duration of inter-phrase intervals reflect the close relation between 'Ma' and breathing. Furthermore, respiration was tended to be influenced by music structure of the phrase listened repeatedly.

Keywords: music,‘Ma, method of serial judgement and breathing.


1.はじめに

 音楽的演奏において、演奏時間は必ずしも楽譜上に記された音価どおりではなく、芸術的逸脱が生じるのが常である(Gabrielsson, 1999[1])。その中でも、特に曲の重要な句切りにおいては、楽譜から大きく逸脱して演奏された方が、むしろ、聴取上「ちょうど良い」と感じることがある。そして、聴取上「ちょうど良い」と感じられる時間間隔が、テンポの如何に関わらずほぼ一定の値に収束することから、「間」の感性との関連が指摘されている(中村, 1987[2])。「間」という言葉は、日本の文化の中でさまざまな意味で用いられるが、本研究においては、音楽の中で、前のフレーズと次のフレーズとをうまく句切り、かつ、うまくつなぐものとして「間」を扱う。

 音楽における「間」と生理学上の呼吸とが密接に関連することが、中村(1994)[3]によって報告されている。中村の実験1では、フェッシュ作Sonataやグラナドス作Sardana等が聴取音楽として用いられ、それらの音楽を聴取する際の被験者の呼吸が測定された。結果から、音楽の「間」の終わりと呼吸の変化点とが同期する傾向が強いことが示された。

 本研究においては、中村(1994)[3]の研究を更に発展させ、被験者自身に「間」の長さを調整させてその際の呼吸を測定する。「間」の長さの調整のために系列判断法を用いるが、この方法は被験者調整法であり、長時間の音楽的文脈中の複数のフレーズ間の間隔を、時系列的に調整することを可能にするために考案された。実験で得られる呼吸波形と被験者自らの調整した「間」との関連を検討し、さらには聴取音楽の構造と呼吸との関係について考察する。





2. 方法

2.1 被験者

 正常な聴力を持つ大阪大学学部生で、18〜19歳の男性6名、女性2名。被験者らは特別な音楽的訓練を受けていない、一般学生である。

2.2 刺激

 刺激は、Franz Schubertの歌曲Prometheus D.674(邦題『プロメテゥス』。Bariton: Siegfried Lorenz、Piano: Norman Shetlerによる演奏である。販売元:ドイツシャルプラッテンレコード)の第64小節3拍目から第87小節3拍目までをSoundEdit16.2J(Macromedia)でデジタル録音し、P1(第64_65小節)、P2(第65_71小節)、P3(第71_77小節)、P4(第78_82小節)、P5(第83_85小節)、およびP6(第85_87小節)の6フレーズに分割して用いた。フレーズとフレーズのあいだを、それぞれ前から順にM1、M2、M3、M4、M5とする(図1)。

刺激の音波形

P1P2P3P4P5P6
↑ ↑ ↑  
M1M2M3 M4 M5  

図1 刺激の音波形

Fig. 1 Waveform of stimulus.

2.3 装置・器具

 実験は大阪大学人間科学部情報行動学防音室で行った。刺激の提示および被験者の反応の記録はすべてコンピュータ(Macintosh8500/132)上の実験用アプリケーションで行う。被験者は、M1〜M5の長さの調整や刺激の再生などの操作を、このアプリケーションのウインドウ上でマウスを用いて行う。刺激以外のノイズをなくすため、コンピュータおよび、そのモニタ(SONY: Multiscan 20sf3)は防音室の外に設置した。実験中、被験者は防音室内から窓を通してこのモニタを見ることができる。更に、モニタ後部を暗幕で覆い、モニタ以外の視覚刺激は与えないようにした。防音室内の窓ぎわに被験者用の椅子を置き、被験者のすぐ左に配置したアクティブスピーカシステム(Sony: SA-PC5)から刺激を呈示した。被験者が実験用アプリケーションを操作するためのマウスは被験者の前に置いた。スピーカシステムおよびマウスはコネクタボックスを通じて防音室外のコンピュータに接続した。実験用アプリケーションはRealBasic1.1.1(RealSoftware)で作成した。呼吸測定のために、胸郭呼吸ピックアップ(BIOPAC Systems: MP100)を使用し、呼吸波形をMacintosh上に記録した(使用ソフトはBIOPAC Systems: AcqKnowledge v2.1である)。

2.3 手続き

 本試行の前に、練習試行としてスピーチの「間」を調整する課題を1回行った。練習試行にも本試行にも系列判断法が用いられた。系列判断法は被験者調整法であり、被験者は以下の手続きにしたがってコンピュータを操作しM1〜M5の長さを調整した。

(1) M1〜M5の長さを、聴取上「ちょうど良い」と感じる長さに、前から順に一通り調整する。ウィンドウ中の再生ボタンを押すと二つの連続したフレーズが再生される。最初、フレーズ間(M1〜M5)の長さが4秒で再生されることにより、被験者らはフレーズの句切りを知ることができる。そして、フレーズ間の長さが長いと感じたら左に、短いと感じたら右に、スライダーを移動する。再び再生ボタンを押すと、被験者が操作した長さで再生される。これを何度も繰り返し、自分の納得のいくまで調整する。

(2) 一通り調整が済んだ後、全再生のボタンを押し6フレーズを通して聴き、「曲全体として丁度良い」と感じるようにM1〜M5のそれぞれを再調整する。このときも、納得のいくまで何回も繰り返すことが許された。

 呼吸の測定は、教示後まもなく開始した。





3. 結果と考察

3.1 もとの演奏との比較

 系列判断法によって最終的に得られた、被験者自らが聴取上「ちょうど良い」と感じるM1〜M5における長さを、もとの演奏で表現されている長さと比較し、図2に示す。M1〜M5における判断値として、先行フレーズの最終音のオンセットから後続フレーズの最初の音のオンセットまでの長さを計測した。被験者には楽譜やもとの演奏そのものを呈示していないが、全体的な折れ線の形はもとの演奏のそれとほとんど同じである。全体的にもとの演奏よりも長い傾向があるが、演奏者の演奏や被験者の判断は、共通する「間」の感性に基づいていることを示唆するデータである。

比較

図2 もとの演奏との比較

Fig. 2 Comparison to original performance.



 以下、M1〜M5のそれぞれについて、聴取時の呼吸と聴取音との関係を検討し、さらに拍節構造の観点から判断値を考察する。被験者が「ちょうど良い」と感じる長さの平均が長い方から、M4・M3、M1、そしてM5・M2に分けて示す。

3.2 M4・M3

3.2.1 M4

 多くの被験者らによって長く調整されたM4は、雄々しく歌い上げられるP4と、静かに問いかけるように歌われるP5のあいだに位置する。図1で示した波形の振幅が、P4で最も大きく、P5は極端に小さいことからも、これら二つのフレーズから受ける印象がまったく違うということが明らかである。また、P4ではM.M.= 約87であるに対して、P5では M.M. = 約50とテンポにかなりの差がある(M.M.は一分間当たりの拍数)。同刺激、同手続きを用いて、29名の音楽的訓練を受けない一般大学生を被験者として行われた小森・中村・長岡(1999)[4]の実験では、被験者にM1〜M5について曲の句切りとしての重要さを順序づけさせた。その結果、72%の被験者がM4を「曲の最も重要な区切り」と回答している。

 図3に呼吸波形の例を示す。被験者間で呼吸パターンはまったく異なるが、同一被験者の、同一フレーズ聴取時の呼吸波形のパターンは酷似する傾向がある。特にフレーズの最初や終わりにおいて酷似することが多い。

 実験の手続き上、他のMの長さを調節するため曲全体を聴取する際、調整済のMを何回も聴取することになる。図3には、各被験者が「ちょうど良い」と感じる長さで聴取したもの(4〜8回)のうち、フレーズの終わりや始めで形が酷似する呼吸波形を重ねて示す。息を吸っているときの呼吸波形は右上がり、息を吐いているときは右下がりを示す。したがって、波形の山(上に凸の頂点)は吸気から呼気への変化点、谷(下に凸)は吸気から呼気への変化点である。呼吸波形の下に聴取音の波形を示す。

 なお、被験者KAと被験者KHは、咳等の理由で安定して呼吸が測定されなかったため、呼吸波形は分析しなかった。残り6名の被験者の呼吸波形を分析した。

 図3に示すように、P4の歌の最後の句Meine Herrn und deine(対訳:俺の主でありおまえの主でもある)のHerrn の前後、或いはdeineの立ち上がりと、呼吸の変化点との同期が、6名中4名の被験者に見られる。さらにMeineの部分と一呼吸とが同期することもしばしば見られる(6名中4名)。図3で示すP4の音波形の振幅が、徐々に大きくなりMeineで最大になっていることから分かるように、クレシェンドによって引き起こされる緊張感がMeineの部分で最高に高まり、被験者の呼吸に影響したと推測できる。図3(c)から、Meine以前においてはおそらく自己固有の呼吸が繰り返されているが、Meineの部分において呼吸が音楽の影響を受けていることが示唆される。

 また、後続するP5の歌の始まりと呼吸の変化点が同期したり(6名中4名)、ピアノ音のオンセットと呼吸の変化点が同期することがある(6名中1名)。ピアノよりも歌の始まりと呼吸が同期しやすいことから、被験者らが歌に注意を向けて聴取していることが示唆される。特に図3(a)被験者TIについては、P5のピアノが鳴ってから歌の始まりまでの間、呼吸波形がほぼ横這いであることが示すように、被験者は息を止めた状態で、ピアノの音を手掛かりに歌の始まりを予測し待っているようである。息を止めて歌の始まりを待つ結果、一呼吸が他の部分におけるよりも若干長くなる。

 ところで、フレーズ間の長さを調整するために、拍節構造を利用するという手段も考えられる。しかし、前述の小森他(1999)[4]の実験結果によると、M4における被験者の判断値は、先行する文脈のテンポと拍節構造に合致せず、ほぼ1.4秒周期の分布を示した。本研究によってM4と呼吸との強い関係が示されたことから、1.4秒の周期性は「間」と呼吸との関連を反映していると考えられる。

波形



3.2.2 M3

 M3はP4に隣接するという点で、M4と共通する。先行するP3の終止前約1.5小節以降のピアノ伴奏では、リタルダンドが表現されている。このリタルダンドを除くと、P3の方が若干テンポが速い。

 図4で示すように、M3の前後において、多くの被験者に呼吸パターンの酷似が見られる。P3の前半においては、聴取音との関係が見出しにくく、自己固有の呼吸と思われるが、歌の終わりや最後のピアノ音の立ち上がりと呼吸の変化点が同期する(ともに、6名中3名の被験者に見られる)。後続のP4では2拍目や3拍目と呼吸の変化点とが同期しやすい(6名中5名)。

 図4(a), (c), (d), (e)は、M3において一呼吸の長さが他の部分におけるよりも延長するという特徴がある。後続フレーズの2拍目や3拍目と呼吸を同期させるために、呼吸が調整されたと考えられる。被験者TIの息を詰めている様子(図4(e))は、M4においても観察できる。

 さらに、P4聴取時の呼吸波形は、各小節の1拍目と3拍目と呼吸の変化点が同期したり(図4(c))、各小節の2拍目や4拍目で呼吸と同期する(図4(a)と図3(b))ことがある(図4中(1))。力強く訴えかけるP4の、歌のリズムや歌詞の押韻といった音楽の構造特性に即して呼吸が調整されたと解釈できる。

 ところで、小森他(1999)[4]の実験では、M3において被験者の判断値の分布は、拍節構造に合致する群と1.4秒周期の群とが混在する状態であった。そのうち、M3を「区切りとして重要」と考える被験者の判断値は全て、1.4秒周期の群に属した。本実験において、判断値が拍節構造に一致するのは被験者KNと被験者MMの2名のみである。両者ともにフレーズの終わりと呼吸の変化点との同期が見られた(被験者MMの呼吸波形は図4(b)に示す)。

波形



3.2.3 M4・M3の共通点

 以上見てきたM4と M3はともに、雄々しく歌い上げられるP4に隣接し、その前後をうまく句切り、かつうまくつなぐ「間」としての役割を担っていると考えられる。そして、M4とM3は、被験者らの判断値も比較的長く、呼吸との密接な関係が示された点でも共通する。後続フレーズの歌やピアノの始めと呼吸の変化点が同期するという結果は、前述の中村(1994)[3]を支持する。さらに、本実験によって、先行フレーズの歌やピアノの最終音と呼吸の変化点とが同期することが示された。先行フレーズの終わり、並びに、次のフレーズの始めと呼吸の変化点が同期する結果として、ちょうど2呼吸、または3呼吸、または2呼吸半の呼吸がM4や M3においてなされる。このときの呼吸パターンは、先行フレーズにおける呼吸パターンから逸脱し延長する傾向がある。M4や M3においては、このような呼吸との関連からちょうど良いかどうかの判断がなされるため、小森他(1999)[4]の研究において、判断値が約1.4秒周期性をもって分布したのではないだろうか。

3.3 M1

 M1に先行するP1はピアノのみの演奏であり、それに続くP2はピアノの伴奏から始まり、その後歌が加わる。いわば導入部と主要部分のあいだにM1は位置する。

 図5Aが示す呼吸波形では、P1のピアノの最終音と呼吸波形の山との同期、および、P2の歌の始めと呼吸波形の山の同期が見られるが、他の被験者の呼吸波形にはそのような同期はない。おそらくP1が短いため、M1 前後において呼吸は聴取音の影響を受けにくいのであろう。

 また、被験者らの判断値を拍節構造の観点から説明することも難しく、おそらくこれも、P1が短く、長さが異なる3音しかないことに起因している。

3.4 M5・M2

3.4.1 M5

 P5P6はともに、静かに問いかけるように歌われる。P6の方が1小節当たりの長さが長く、刺激の終止としての役割がある。

 M3やM4においてほどではないが、呼吸との関連が見出される(図5B)。P5の歌の終わりと呼吸の変化点が同期することが6名中3名の被験者の波形に見られる。また、P6の2拍目と息の吸い始めが同期する(6名中2名)。

 また、P6の歌で最も音価の長い付点四分音符に当たる歌詞alleのal-と一呼吸或いは半呼吸が同期する例もあり(6名中2名、図5B中(2))、このことから、聴取フレーズの構造特性と呼吸との関連が示唆される。

 小森他(1999)[4]の実験では、M5において多くの被験者の判断値が拍節構造と合致した。しかし、本実験においては拍節構造に一致しない判断値の方が多かった。また、判断値が拍節構造にほぼ一致する被験者MMの呼吸波 形にも、呼吸との関連も見られる(図5B(b))。

3.4.2 M2

 先行するP2と後続の P3は、旋律やリズムの上でよく似ている。演奏の時間的側面は、P3の終止第2小節でリタルダンドが表現されていることを除くと、ほとんど同じである。

 図5Cに示す呼吸波形では、歌の終わりや歌の始めと呼吸の変化点がほぼ同期する。歌の終わりと呼吸の同期は6名中3名、歌の始まりとの同期が6名中2名の被験者に見られた。

 さらに、P3聴取時には、歌詞の句切りである休符と、呼吸の変化点との同期が見られた(6名中1人、図5C中(3))。これと同じ同期が、P2聴取時にも見られる(図5A中(4))。また、図3(a), (b)中(5)で示すように、P5聴取時にも、歌詞の句切りである休符と呼吸の同期が見られる。歌詞と音楽構造がよくマッチしているために、聴取時の呼吸が音楽の歌詞やリズムに合わせて調整されたと推測できる。

 また、M2における判断値はほぼ拍節構造に合致し、小森他(1999)[4]もほぼ同じ結果を得ている。そして、判断値が拍節構造に一致する被験者の呼吸波形においても、フレーズの終わりと呼吸の同期が見られる。

3.4.3 M5・M2の共通点

 M2と M5とは、先行フレーズと後続フレーズの持つ印象にあまり大きな差がないという点、被験者らの判断値がより短い点で共通し、M3やM4とは性格が異なるようである。M2、 M5においても、呼吸との関連が見出されたが、M3やM4におけるほど多くの被験者に見られるわけではなく、M3やM4に特徴的であった、呼吸の延長は見られなかった。また、M2、 M5における被験者らの判断は、テンポと拍節構造によって判断が説明できる場合もある。

波形



3.5 被験者間の比較

 呼吸波形には、被験者ごとの特徴がある。被験者TOの呼吸は、P4聴取時はリズムに合った呼吸がなされたり、P3聴取時には休符と呼吸の変化点が同期するように、聴取音楽の構造と呼吸との関係を見出しやすい。その結果、フレーズを聴取するときにはそのフレーズにあった呼吸がなされ、フレーズとフレーズのあいだにおいて呼吸は、若干他の部分より延長する。また、被験者TIは、歌の始まりの直前で呼吸を止めるということが特徴である。このように、被験者ごとに特徴があるため、もし調整された長さが等しくても、被験者間で呼吸パターンが一致するわけではない(図4(c)と(d)は判断値がほぼ等しく、かつ、呼吸パターンも類似する例である)。





4. 結論

4.1間の判断の分布

 本研究によって、比較的長い時間間隔が聴取上「ちょうど良い」と感じられる「間」においては、先行フレーズの歌やピアノの最終音、および、後続フレーズの歌やピアノの始まりと呼吸の変化点が同期する傾向があることが示された。そして、このような呼吸との密接な関連によって「間」の長さが判断されたと考えられる。一方、短い時間間隔が聴取上「ちょうど良い」と感じられる場合、拍節構造の観点から判断値を説明できることもあるが、このときにも、長い「間」の場合ほどではないが、呼吸との関係が見られる。

 また、同じフレーズを何回も繰り返し聴くうちに、そのフレーズの音楽構造に即した呼吸がなされる傾向があることも示された。特に歌の影響が大きく、例えば、歌詞の押韻とリズムがマッチしている場合(P4)や、歌詞の句切れと休符が一致する場合(P2やP3、P5)に、聴取フレーズの歌のリズムに合わせて呼吸が調整される。

 本研究が明らかにした、音楽、特に「間」と、呼吸の関係は、われわれの日常生活のさまざまな面に応用して考えられる。われわれは、好きな音楽を飽きることなく何度でも、積極的に聴くことがある。これは、音楽で表現される「間」によって安静時の呼吸に変化が与えられることが、心地よいと感じられるためかもしれない。つまり、呼吸が変化することを求めて、われわれは自ら積極的に音楽を聴くのではないか。絶妙の「間」が実現されている音楽では、なおさら繰り返し聴きたいと思うだろう。そして、いくら収録・再生技術が発達しても、コンサートの人気が衰えることがないのも、このような観点から説明できそうだ。つまり、コンサートで与えられる視覚情報の効果もさることながら、視覚情報によって音楽と呼吸の同期が促進され、それを求めてコンサートに出向くのではないだろうか。視覚情報による音楽と呼吸の同期の促進は、中村(1994)[3]の実験5によって検証されている。





参考文献

[1] Gablielsson,A.: The performance of music; The Psychology of music (Deutsch, D. ed.), Academic Press, Pp.532-543(1999).

[2] 中村:演奏時間における楽譜からの逸脱-“間”の知覚との関係-;日本音響学会音楽音響研究会資料MA87-6(1987).

[3] 中村:音楽における「間」と呼吸について;日本音響学会音楽音響研究会資料MA94-16(1994).

[4]小森, 中村, 長岡:音楽の「間(ま)」の判断における文脈効果;日本心理学会第63回大会発表論文集(1999).



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